
こども食堂を見に行ったのに、共同体の未来を見てしまった話
大阪・森之宮へ行ってきた。
目的は二つあった。
一つは、森之宮のUR団地で続けられているこども食堂。

もう一つはそのすぐ近くで動き始めているほとりでガクショクを見ることだった。
※「暮らしと学びの実験フィールド ほとりで」で不定期開催される大学の学生向けの食堂(コミュニティ食堂)のこと。

二日間を通して見ているうちに、私は同じものを見ている気がしてきた。
それは「共同体が育つ過程」だった。
最初に森之宮のこども食堂で感じたのは、とにかく自然だったことだ。
誰かが理念を語っているわけではない。
教育プログラムがあるわけでもない。
子どもが来る。
親が来る。
おばあちゃんが来る。
大学生が来る。
手伝う人が来る。
気が付くとみんな何かしらの役割を持っている。
そしてご飯を食べる。
帰る。
ただそれだけだ。

でも、その「ただそれだけ」が異常に強かった。
そこには無理がない。
社会課題を解決している感じもない。
居場所づくりをしている感じすらない。
ただ続けていたら、そうなった。
そんな空気だった。

私は普段、人と人が混ざる場づくりをよく考える。
どうやったら対話が生まれるか。
どうやったら関係性ができるか。
どうやったら面白い人が集まるか。
そんなことばかり考えている。
でも森之宮で見たものは、それらを少し飛び越えていた。
設計された共同体というより、
続けていたら共同体になっていた場所。
そんな印象だった。

面白かったのは、そこに強い教育色がないことだった。
フリースクールでもない。
塾でもない。
ワークショップでもない。
まず飯を食わせる。
本当にそれだけだ。
野菜を食べる。
みんなで食べる。
顔を合わせる。
帰る。
それだけ。

しかし不思議なことに、その積み重ねの中で子どもたちは少しずつ育っていく。
教育をしているというより、
人間が人間として存在できる場所を維持している。
そんな感覚だった。


そして翌日。
訪れたのは、森之宮で進められている「ほとりでガクショク」だった。
ほとりでは、大阪公立大学、UR、地域活動が重なりながら進められている「暮らしと学びの実験フィールド」である。

そしてその中で始まったのが「ほとりでガクショク」だった。
まだ始まったばかりだ。

森之宮のこども食堂のように長年積み重なった空気はまだない。
むしろ今はスタート地点に近い。
だからこそ面白かった。

大学生という存在は少し特殊だ。
子どもではない。
でも社会人でもない。
人生の分岐点の真ん中にいる。
進路。
研究。
就職。
恋愛。
将来への不安。
社会との接続。
自分は何者なのかという問い。
さまざまなテーマを抱えている。
だから同じ「ご飯を食べる場所」でも、こども食堂とは少し意味が変わってくる気がした。
子どもたちにとっては、
まず居場所。
まず安心。
まず飯。
それ自体が価値になる。

しかし大学生になると、その先が自然と生まれてくる。
誰かと話す。
社会人と出会う。
研究者と出会う。
地域の人と出会う。
自分と違う価値観を知る。
自分の悩みを言葉にする。
自分の未来を考える。

つまり共同体に求められる役割が少し増える。
もちろんスタートは同じだ。
まずは美味しいご飯を食べられること。
まずは気軽に来られること。
まずは居場所。
しかし大学という場所では、それだけで終わらない。
自然とその先が求められていく。

そして今回面白かったのは、その空気を感じ取った大人たちがすでに集まり始めていることだった。
地域活動をしている人。
教育に関わる人。
研究者。
表現者。
企業人。
いろいろなテーマを持った大人たち。
そういう人たちが少しずつ引き寄せられている。

それはたぶん大学という場所の持つ特殊性でもある。
子どもたちの未来を考える人は多い。
しかし大学生は、もっと具体的に社会の入口に立っている。
だから大人たちも何かを託したくなる。
何かを渡したくなる。
一緒に考えたくなる。

共同体というものは、最初から意味を持って生まれるわけではない。
最初はただのご飯かもしれない。
最初はただの居場所かもしれない。
しかし人が集まり続けると、その場所は少しずつ社会的な意味を帯び始める。
言い換えれば、共同体は後から鎧を着る。

森之宮のこども食堂では、その先にある景色を見た。
ほとりでガクショクでは、その手前の景色を見た。
同じ森之宮で、一方は育った共同体を見て、もう一方では生まれ始めた共同体を見ている。

数年後、この場所は何になっているのだろう。
学生食堂のままなのか。
地域拠点になるのか。
若者たちの居場所になるのか。
新しい学びの場になるのか。
それとも全く違う何かになるのか。
まだ誰にも分からない。

ただ一つ思ったのは、
共同体というものは理念から始まるのではなく、
案外、美味しいご飯から始まるのかもしれないということだった。
そして今、森之宮ではその続きを見られそうな気がしている。
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