
アイマスクが子どもたちの「思ったことを言う力」を引き出した
令和8年5月30日、第3回アゲイン・アゲイン・プロジェクトを実施した。
※本イベントは、子どもたちにデジタル技術を活用した創造体験を提供すると同時に、保護者と子どもが同一空間で「仕事」と「学び」を共存させる新しいモデルを実証することを目的として企画されたものである。

私は今回、一般社団法人ソフトウェア協会(以下、SAJ)の取り組みに協力する形で、SAJ会員企業である 株式会社テクノロジードック の須賀として参加した。少人数での開催となったこともあり、普段以上に子どもたち一人ひとりの反応を見ながら、講師陣がその場で内容を調整し、臨機応変にプログラムを進めることができた。

その中で私は今回も「発明」をテーマにした授業を担当したが、以前から試してみたいと思っていた取り組みを実施した。

きっかけは、先日、流山市の視覚障害者協会の皆さんと行った体験イベントだった。
その際、参加者はアイマスクを装着し、視覚情報がない状態でさまざまな活動を体験した。すると、多くの人が「見えないことの不便さ」を感じる一方で、別の変化も起きていた。

それは、「人の表情や反応を気にしなくなる」ということである。
普段私たちは、無意識のうちに周囲の視線や表情を読みながら会話している。
「こんなことを言ったらどう思われるだろう」
「変なことを言っていないだろうか」
「周りと違う意見にならないだろうか」
こうした確認作業を常に行っている。
しかし、見えなくなると、その確認そのものができなくなる。

発明や創造の出発点は、新しいアイデアを出すこと以前に、「自分はどう思うのか」を言葉にすることである。

また、AIを活用する時代になり、自分の考えや感覚を即座に言語化する力の重要性も高まっている。
そこで今回は、子どもたちに目隠しをした状態で意見を言ってもらうことを試してみた。

本来であればアイマスクを使用する予定だったが、急遽手元になかったため、大きめのマスクで代用した。そのため見た目はどこか可愛らしい状態になってしまったが、実験としては十分成立した。
子どもたちは目元を隠した状態で座り、私が肩を軽く叩いた子に発言してもらう。

誰が発言したのかは周囲にはわからない。
そんなルールで進めてみた。
終了後、子どもたち自身は
「別に話しやすくなったとは思わない」
「マスクで顔が暑かった」
など、アイマスクそのものへの感想を多く話していた。
しかし、大人側から見た印象は全く違っていた。

普段よりも圧倒的に発言量が多い。
しかも、自分の考えを比較的スラスラと話している。
さらに印象的だったのは、「誰が言ったか」がわからないことである。
普段の教室では、
「あの子が言ったから」
「さっき〇〇くんが言っていたから」
という人間関係の文脈が無意識に介在する。

しかし今回は、それがほとんど存在しなかった。
意見だけがその場に置かれる。
発言者と発言内容が切り離されることで、子どもたちは意見そのものに反応するようになっていた。
関西弁で言えば、「知らんけど」の状態である。
誰が言ったかは知らない。
でも、その意見は面白い。
そんな空気が自然に生まれていた。

今回の実践を通じて感じたのは、子どもたちは決して意見を持っていないわけではないということである。
むしろ、多くの考えや感覚を持っている。
しかし、その前に「誰が言うのか」という社会的な情報が入り込みすぎているのかもしれない。

アイマスクによって視線や評価から一時的に切り離されることで、「自分がどう思うか」に集中しやすくなった可能性がある。
発明教育においても、創造性教育においても、まず必要なのは優れたアイデアではない。
「私はこう思う」と言えることだ。

今回の小さな試みは、その入り口をつくるための有効な手法になり得ると感じた。
今後は発明教育だけでなく、自己表現や対話の場面など、さまざまな場面でこの取り組みを試していきたいと思う。
第3回アゲイン・アゲイン・プロジェクトは少人数開催だったからこそ、こうした新しい挑戦ができた回でもあった。
子どもたちの創造性を引き出す方法は、まだまだある。
今回得られた発見を、次回以降の活動にも活かしていきたい。












