弊社のクライアントの多くは、顧問税理士事務所と連携をとりながら業務やプロジェクトを進めています。
そのため、税理士先生側・経営者側、それぞれの事情がよくわかるつもりです。
弊社の立場から両者をみると「報酬以下のサービスしか提供していない先生」「報酬が安すぎて嫌気をさしてしまっている先生」の姿も見受けられます。
そのような現状を打破するため、まずは中小企業と税理士先生の現状を分析していきます。
税理士先生を悩ませる中小企業の実情
- 報酬以下のサービスしか提供していない先生
- 報酬が安すぎて嫌気をさしてしまっている先生
この両者が生まれてしまう背景には、中小企業が抱えている問題や悩みがあるはずです。
まずは、そのあたりの中小企業の事情をひも解いていきます。
中小企業経営者を悩ませる数々の判断材料
昨今、中小企業経営者は経営判断や事業戦略に四苦八苦しているはずです。
- 支援金給付
- 外出自粛
- テレワーク推進
- 為替変動
- 人手不足
- ライフスタイルの変化
コロナ渦からの緊急事態宣言・戦争などの有事により起こった上記のような世の中の動きが、経営者を日々悩ませる要因となっています。
中小企業経営者から見た税理士先生への不満やニーズ
弊社が接する中小企業経営者からは、以下のような声をよく耳にします。
- うちの顧問税理士先生が支援金対応をしてくれない
- 高齢の先生でIT化ができない
- 対面でしか対応できない
- 経営面の相談をしても、税理士としての職務外といわれてしまい、誰に相談してよいかわからない
さらに、以下のような声を漏らす経営者達は、顧問税理士の変更を検討しているのでしょう。
- うちの先生の報酬は高い
- 安い税理士先生を紹介してほしい
- 女性の先生がよい
税理士先生の立場からすれば、顧問契約している企業の経営者からこのような声が挙がっていることは心外かもしれません。
しかし、税理士は中小企業のニーズを満たしながら悩みを解決できるサービスを提供することが使命のはず。
そのためには、相手側のニーズをくみ取りつつ、それを適正価格で販売するサービスを構築する必要があるでしょう。
税理士報酬を取り巻く昨今の流れ
私がまだ社会に出る前などは、税理士先生も自由競争からは一線を画していました。
報酬は決まった算出方法があり、その中で正しい税申告を行い、経営者の疑問に答えていくことで義務を果たしていたはずです。
しかし、今は税理士業界も自由競争の波にさらされています。
税理士の業務内容とコスト
税理士の業務は、一般的に顧問契約であれば以下の報酬体系をとることが主なはずです。
- 月額顧問
- 決算申告報酬
- 年末調整法定調書作成報酬
- 税務調査立ち合い報酬
これらが報酬体系となり、試算表の算出や相談・訪問、場合によっては記帳代行などをサービスに含めているでしょう。
または、日々の会計ソフトへの入力ができるなど、経理・総務経験豊富な社員を備えている会社では、決算申告報酬のみの対応をしているスポットのケースもあります。
その中で、税理士報酬の原価は主に人件費・システム料、固定費は家賃・事務用品店通信費と比較的軽いコストで済むはずです。
しかし、経営をするうえでは広告宣伝費(WEB戦略)や税務以外の人件費なども必要になってくるでしょう。
対面訪問は最高級のサービス
月額報酬内で人件費(先生の実働も含む)などの原価を除いて、ほとんど利益が残らないのであれば価格設定を誤っています。
特に先生自身が訪問などするのであれば、日当としてはかなり高いものとなります。
昨今は人件費や交通インフラの高騰により、対面訪問は最高級のサービスだといえます。
リモートミーティングも、時間拘束からするとある程度の報酬をいただかなければなりません。
税理士業界が価格競争に陥っている理由
最近は税理士のマッチングサービスなどが台頭してきており、その業者様に払う仲介手数料も加味しないといけません。
さらには、マッチングサービスにおいて、自身のサービス力の表現があまり得意ではない税理士先生も多いでしょう。
いわゆるパッケージ化が苦手な方が多いです。
「やってからわかる」では、どうしても価格勝負になってしまうことが多く、ついつい無理して安く請けてしまいます。
得意先はなるべく多く抱えたいものです。
得意先が大きく成長し、いわるゆ青田買いになるかどうかは、その得意先次第の部分が多いでしょう。
そのため、最初は安く請けることで顧問契約を囲うしかなくなります。
しかし、得意先の成長が見込めないときはリスクでしかありません。
報酬が安いからといってしっかり内容を精査しないと、税務調査で修正・追徴になってしまいます。
良質なサービスを提供するために、まずはしっかりとした原価計算を
まずは、先生自身の人件費も必ずふくめて自社の原価計算をしっかりし、限界価格を設定しましょう。
それ以上の金額内で相見積もりなどに加わるべきです。
税理士は「税金を正しく計算し、正しく申告納税を促すこと」が絶対使命です。
使命をしっかりとまっとうできる報酬体系を整えることが基本となります。
次回のコラムでは、月額報酬と経営コンサルティングの兼ね合いについて解説します。
税理士先生のフォローとしてのコンサルティング業に関しては、おおたかの森ファーム株式会社(https://otakanomorifirm.com/contact/)までご相談ください。