経営者の「120%提供」の罠と抜本的対策—持続可能なビジネスへの道

多くの経営者が「クライアントに120%を提供し続ける」問題に悩んでいます。一見良い姿勢に見えますが、長期的には経営者や組織全体に大きな負担をかけることが少なくありません。この課題と解決策について考えます。

120%を追求する経営者の苦悩

クライアントに120%を提供する経営者の苦悩は多岐にわたります。

持続不可能なプレッシャー:120%の努力を求め続けることで、経営者だけでなくチーム全体が限界を超えた負担を強いられ、疲労や燃え尽き症候群のリスクが高まります。

合理性の崩壊:完璧以上を提供しようとする姿勢はリソースの過剰投入を招き、採算性や他プロジェクトへの対応力を損ないます。

過剰な期待の連鎖:一度120%を提供すると、それが新たな基準となり、不毛な期待のスパイラルに陥りやすくなります。

抜本的な対策方法

このような状況から抜け出すためには、「120%の提供」に固執せず、クライアントにとっての最適解を追求する視点が重要です。以下に、そのための具体的な対策を挙げます。

99%の安定提供を目指す

最も重要な対策は、「99%の価値を安定して提供する」という考え方です。これにより持続的な成果を提供し、長期的な信頼関係を築けます。完璧を追求せず、高品質を安定して提供することで期待値をコントロールし、無理のない持続可能なサービスが可能になります。

「時価」と「価値」を見極める

120%を提供することは、しばしば自分の提供価値に対する不安から来るものです。経営者として最も重要なタスクは、「今、提供するサービスの価値がどこにあるのか」、そして「その工数やリソースに見合った適正な価格がどこにあるのか」を見極めることです。これは、クライアントに対してどのような価値が真に必要とされているのかを見極め、それに見合ったコストや労力を設定することに繋がります。

80%から上げていく思考法

120%を目指して全力を出し続けるのではなく、一旦80%の状態から改善を重ねていくというアプローチも有効です。初めからすべてを完璧にするのではなく、むしろ「まずは出来る範囲で着手し、それを徐々に改善していく」ことで、より現実的かつ持続可能な成長を図ることができます。この方法は、必要以上に無理をしないで済むため、精神的なプレッシャーも軽減されます。

新しい経験を通じて「適正なライン」を体感する

キャパシティを超えた仕事に挑むことで、120%を提供し続ける経営者が本当の限界を知るきっかけとなります。この体験を通じて、実際の100%を理解し、「120%を提供しなくても価値がある」と実感できます。ただし、この方法にはリスクが伴うため、度胸とリスク管理が必要です。

まとめ

クライアントに120%の価値を提供する姿勢は短期的には成果を生むものの、長期的には経営者やチームに負担をかけ、持続可能性を損なうリスクがあります。真の成功は「安定した99%の成果を継続的に提供し、信頼関係を築くこと」にあります。「99%で十分」という視点を持ち、限界を知り、適切な期待値を設定することが健全なビジネスと誠実な関係構築の鍵です。

須賀 孝太郎
おおたかの森ファーム 代表取締役
東京工業大学工学部を卒業後、工業デザイン事務所にてデザイン業務を経て、家業である税理士事務所に入社。そのノウハウを生かし経営コンサルティング おおたかの森ファーム株式会社 を設立。ボクシング好きの三児の父。
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