納期を設定せずにやる気を維持するマネジメントの工夫

 

ビジネスやプロジェクトにおいて、「納期」がしばしば人々の行動を方向付ける大きな要素になります。
納期は、短期的なプレッシャーをかけ、明確な達成目標を与えるという役割を持ちますが、一方で無理な締め切りがストレスや品質低下、無駄な揉め事を引き起こす原因になることもあります。
では、もし納期を設けずに、目標を追いかけるとしたら、どのように人々のやる気を維持し、成果を上げることができるでしょうか?
ここでは、そのための重要なマインドセットと実際の工夫を紹介します。

 

 

納期のプレッシャーから解放する利点

まず、納期がないことの利点は大きいです。
個々がストレスから解放され、より自由な発想で仕事に取り組む余地が生まれます。
時間に追われることで妥協したアイデアや質の低下を避け、プロジェクトの真価を追求できる環境を整えることができます。
しかし、その反面、モチベーションや進捗管理が曖昧になり、チーム全体のエネルギーが分散してしまうリスクもあります。
こうしたリスクを防ぐために、以下のマインドセットや戦略が有効です。

ビジョンとミッションの強調

納期を設定しない代わりに、全員が「どこに向かっているのか」を強く意識することが必要です。
大きなビジョンやミッションを共有し、それがチーム全員に深く理解されていることが重要です。
目的意識を持った働き方は、日々の小さな達成感だけでなく、長期的な目標に向けたやる気を高めます。
リーダーはそのために、定期的に組織のビジョンや進行状況をメンバーに伝え、全員が進むべき方向を見失わないようにする必要があります。

短期的な達成感を提供する

たとえ納期を設けなくても、小さなマイルストーンや進捗を明確にし、チームが一定のサイクルで達成感を得られる仕組みを取り入れることが効果的です。
週次や月次で目標や進捗を確認し、達成できたことを評価することで、プロジェクトが前進していることを実感できます。
達成感は、次のステップへの意欲を高め、チーム全体のエネルギーを維持するためのカギとなります。

内発的動機付けを重視する

納期による外的なプレッシャーではなく、内発的な動機付けを強化することも重要です。
社員やチームメンバーが「なぜこの仕事をしているのか」を理解し、仕事そのものから充実感や成長感を得られるような環境を作ることが求められます。
個々の強みや興味に基づいた役割分担やプロジェクト設定を行うことで、自発的に取り組む姿勢が生まれます。
このようにして納期がない状態でも、メンバーが自律的に動ける仕組みを整えることができます。

柔軟な働き方と自律性を推進する

納期がないからこそ、メンバーに裁量を与え、自分のペースで働ける柔軟性を重視することが大切です。
これは特にクリエイティブな分野で効果を発揮します。
Googleが採用している「20%ルール」は、その象徴的な例です。
このルールでは、社員が自分の通常業務時間の20%を自由にプロジェクトに費やすことが許されており、創造性や内発的な動機を引き出す狙いがあります。
これにより、多くの革新的なアイデアや新製品が生まれました。
納期や厳しい期限に追われず、自律的に仕事に取り組める環境は、やる気を維持しやすい環境を整えます。

定期的なフィードバックとサポート

進捗や成果が不透明になると、メンバーは自分の働きが正しく評価されているか不安に感じることがあります。
そのため、定期的なフィードバックを提供し、メンバーの努力を適切に認識することが重要です。
フィードバックは単なる進捗報告だけではなく、ポジティブな評価を含むことで、モチベーションを高める役割を果たします。
加えて、メンバーに必要なサポートを提供することで、納期がない状態でも、彼らが安心して仕事に取り組める環境を作り上げることができます。

 

 

Googleの「20%ルール」

Googleの「20%ルール」は、社員に通常業務時間の20%を自分のプロジェクトに費やすことを許可した制度です。
これは納期がない中で社員の創造性を引き出し、自律的に仕事に取り組ませることで、革新的な成果を上げる仕組みです。
この制度によって、GmailやGoogleニュースなど、多くの成功したプロジェクトが生まれました。
納期がなくとも、個々が主体的に取り組むことによって、質の高い成果を生み出すことができる一例です。

 

結論

納期を設定せずにやる気を維持するためには、強固なマインドセットと適切なマネジメントが必要です。
ビジョンとミッションの共有、短期的な達成感の提供、内発的動機付けの重視、自律性の推進、そして定期的なフィードバックが組み合わされば、納期がなくともチームは高いパフォーマンスを発揮することができます。
結果的に、柔軟で創造的な環境が、より良い成果を生む基盤となるのです。

納期が必ずしも必要ではない時代に、組織のマネジメントはこれらの要素を活用し、人々の内なるモチベーションを引き出していくべきでしょう。

須賀 孝太郎
おおたかの森ファーム 代表取締役
東京工業大学工学部を卒業後、工業デザイン事務所にてデザイン業務を経て、家業である税理士事務所に入社。そのノウハウを生かし経営コンサルティング おおたかの森ファーム株式会社 を設立。ボクシング好きの三児の父。
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