サイボウズの運営するフリースクール「🔗サイボウズの楽校」で、学校とは別の学びのかたちを必要としている4人の男の子たちと一緒に授業を行った。
今回の授業の目的は、「みんなで何かをつくる」という社会にとって大切な経験をすることだ。
一般的に「モテる人」は特別な技術を持つ人だと思われがちだが、実際に社会で信頼され人を惹きつけるのは、才能ではなく、協調性やチームワーク、役割を大切にする「集団で生きる力」だ。
今回の活動は、その核心を子どもたちに体験として伝える試みだった。
大人は強いから生きているわけではない
授業の冒頭で伝えたのは、「大人はそんなに強くない」という事実だ。
大人になるというのは、
一人で稼いで、一人で全部できるようになることではない。
人を頼り、頼られながら生きる力を持つことだ。
その延長線上に、「チームでプロジェクトをつくる」という今回のテーマがある。

4コマ漫画を「役割分担」でつくる
今回の制作物は、4人で協力してつくる4コマ漫画。
全員でアイデアを出し、最後の判断や方向性を決めるのは「担当者=責任者」とした。
実際にやってみると、子どもたちは口を揃えてこう言う。
「考えるのは簡単だけど、決めるのはすごく難しい。」
これは社会でも同じだ。意思決定とは、必ず重みが生じる行為であり、その重みを引き受ける人物を人は自然と尊敬する。子どもたちは、その片鱗を自分の身体感覚としてつかんでいた。

そっと距離をとる子を気にかける子
途中、集中力が切れて場を離れてしまう子がいた。
その姿を見て、ある子がこう言った。
「あの子連れてきたほうがいいかな?」
「じゃあ、あの子の分は自分がやるよ。」
フォローに回る姿勢は、指示されたからではなく、自発的に生まれたものだ。
これは「責任感の最小単位」が芽を出した瞬間であり、将来の協働能力の核になるものだ。

子どもの集中力は“一瞬”でよい
大人は、授業中ずっと集中してほしいと思いがちだ。しかしそれは、しばしば大人側のエゴだ。
子どもにとって価値があるのは、短くても“本物の集中”が一度でも生まれることだ。
今回参加した子たちは、それぞれがその瞬間を持っていた。
真面目に取り組む子は他者の動きを気にし、最初ふざけていた子も真剣な子の姿に引き寄せられるように集中しはじめる。
その後、「もっとちゃんとやればよかった」と振り返る姿まであった。
これらはすべて、社会で必要な最小の“循環”だ。

個性が重なって一つが生まれる
最終的に、4人の個性が重なり、一つの4コマ漫画が完成した。
この成果物は単なる作品ではなく、
「小さな社会で協力し、役割を果たし、決め、責任を分かち合う」
という経験の象徴だ。
子どもたちは、まだ社会を知らない。
しかし今回の取り組みを通じて、彼らはすでに「社会の本質的な力」に触れていた。
