団塊ジュニア経営者の令和のジレンマ――変化の波に機能停止する『カッコつけ世代』の謎

団塊ジュニア世代の苦悩とジレンマ

団塊ジュニア世代の経営者たちは、数多くの競争を経て社会に出たものの、バブル崩壊後の経済低迷期である「就職氷河期」を経験しました。華やかな時代を味わうことなく、高い忍耐力や不屈の精神が求められる社会の荒波に放り込まれた世代です。現在、令和という激動の時代を迎え、ますます変化のスピードが増すビジネス環境の中で、彼らは「機能停止感」に陥っているように見えます。その背景には、団塊ジュニア世代特有の価値観や成功体験が深く関わっているのです。

「不屈の忍耐」と「競争」を重ねた価値観が生む弊害

団塊ジュニア世代は、受験や就職、出世において「同世代との競争」に明け暮れ、人を蹴落とすことで自身の立場を確保してきました。これにより、成功の定義が「他者よりも勝つこと」に置かれ、忍耐の美徳や成功への執念が強く根付いています。しかし、現代は個々の能力を結集し、互いに協力しながら変化を乗り越える柔軟さが重視される時代です。そのため、競争意識が強すぎるこの世代の経営者は、環境の変化に柔軟に対応できず、ひとたび危機が訪れると「耐える」ことでしのごうとする傾向が強く見られます。

「カッコつけ」への強い執着と情報断絶の弊害

また、団塊ジュニア世代はバブル崩壊後の「かっこいい大人」への憧れを抱き続けてきました。華やかなバブル期に手が届かず、「成功者としての自分を見せる」ことに理想を持ち続けてきたため、経営者になった今でも「カッコつけること」に固執しがちです。結果、経営者としての課題や苦悩を周囲に見せることをためらい、問題を抱えたまま「何とかなる」と黙って耐え続ける傾向が見られます。この姿勢が、情報の断絶を生み出し、結果的に組織の柔軟な対応力を奪う原因となってしまうのです。

変化の時代における対応力の低さ

団塊ジュニア世代の経営者は、「不屈の忍耐」が成功体験と結びついているため、環境が大きく変わる場面で「変化を起こす」ことに対して消極的です。例えば、現在のようにデジタル化が加速し、即応性が求められる時代には、変化への適応が成功の鍵となります。しかし、工夫や変化を重視する姿勢が薄く、むしろ「耐えること」に傾倒するため、時代の波に乗ることができず、ますます機能停止感に陥っているように映ります。

令和の時代に求められる新たなリーダーシップ

では、団塊ジュニア世代の経営者がこの「令和のジレンマ」を乗り越えるにはどうすればよいのでしょうか?まずは、カッコつけることへの執着を手放し、周囲と課題を共有する姿勢が求められます。自身の弱さをさらけ出し、周囲に協力を求めることで、情報共有や問題解決がスムーズに行われ、組織としての対応力が増すでしょう。

また、「耐える」ことだけに価値を置かず、変化に対応するための柔軟な発想や試行錯誤を積極的に受け入れる姿勢が必要です。新しい価値観やテクノロジーを取り入れ、若手世代とも協力しながら時代の変化に適応することで、組織を持続的に成長させるリーダーシップが求められています。

結び:変化の波を乗り越えるために

団塊ジュニア世代の経営者が時代の波に取り残されないためには、自らの「耐える」美徳を変革の方向に向け、変化に対して柔軟に適応する新しい価値観を取り入れることが重要です。カッコつけに囚われず、他者と協力して課題に立ち向かう姿勢が、令和時代における経営者としての真の「かっこよさ」へと繋がっていくのではないでしょうか。

須賀 孝太郎
おおたかの森ファーム 代表取締役
東京工業大学工学部を卒業後、工業デザイン事務所にてデザイン業務を経て、家業である税理士事務所に入社。そのノウハウを生かし経営コンサルティング おおたかの森ファーム株式会社 を設立。ボクシング好きの三児の父。
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